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『母べえ』の時代

 投稿者:湘南の暇人  投稿日:2008年 4月 3日(木)13時42分50秒
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  「余韻」のなでしこさんへの反論の思いが新ページ作成となった。詳しくは本論をご笑覧下さい。その部分を抽出しておきます。

 映画はいずれテレビ朝日系列で放映もされるし、アンコール上映をしている映画館もある。これ以上映画の内容を紹介しても仕方がない。私の女性の友人は、戦後の大人になった初べえと照べえに見守られ、特殊メイクをして老け役を演じた吉永小百合の「母べえ」が息絶えるシーンにいたく憤慨しておられる。つまり映画でも短歌でも鑑賞者の余韻にまかせるべきだと言うのである。とくに姉役の特別出演の倍賞智恵子がお気に召さなかったらしい。むろん倍賞智恵子という女優の存在ではなく「母べえ」の最後のシーンは不要だと言うのである。そう言えば事実、昭和20年生まれの吉永小百合は62歳であって40歳前後を演じて決して違和感がなかったのが不思議なくらいである。つまり特殊メイクをしても普通なら皺だらけの老婆の臨終は無理そのものであった。
 私は「父べえ」の教え子の「山ちゃん」が招集され、戦場に赴く前に海没するシーンが特に不要だと思った。とにかく項を改めるが、250万人の日本人軍人の死因は、戦闘行為の死ではなく餓死・海没が70パーセントを超えるのである。
 私はこの映画でさすが山田洋次監督だなと思う次の二点を強調しておきたい。
 その1点目は、隣組の何世帯かが集まって宮城遥拝をするシーンである。つまりどちらの方向に天皇夫妻が居るかで揉める隣組の集会のシーンは、この時代の日常を象徴していて私にはもっともエスプリ(才気)溢れる場面と思う。この「隣組」の存在こそが私は、先の大戦の元凶だと思う。昭和15年9月、この内務省から通達された「部落会・町内会・隣保班・市町村常会整備要綱」なる訓令である。これが全国に網羅され勤労奉仕や防空演習、食料・生活必需品の配給、金属回収までもが上意下達されたのである。これは「国家総動員法」で述べる。
 2点目は、大人になりかけている姉の「初べえ」に嫌われる母の叔父の仙吉(笑福亭鶴瓶)の言葉である。当時「鬼畜英米」の思想に反対することは非国民だった。因みに当初はアメリカではなく中国上海の「イギリス租界」から始まる反英運動が中心だったのである。世相に阿ることのない「母べえ」の叔父は二人の娘の前で、おならをブウブウする、初べえの胸が大きくなったなどと言うデリカシーのない人だった。ところが奈良へ帰るこの叔父が自分が嵌めていた金の指輪を汽車の発車前に母べえに渡し「この指輪は決して供出してはあかん、闇で売るんやで」という。このシーンに私はもっともこの映画のエッセンスがあると思う。世の中の思惑など気にしない、ホンネで生きるこの叔父の振る舞いは、笑福亭鶴瓶の好演もあって断然光るシーンであったと思う。

http://www1.odn.ne.jp/~ceg94520/homepage/

 

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